融資審査において金融機関がみるポイント(後編) 2025.10.7
こんにちは、税理士の定本です。 金融機関の融資審査では貸借対照表の内容が重要だと「前編」の記事で書きました。しかし、融資審査で大切なのは貸借対照表だけではありません。
確定申告書類、決算書類は貸借対照表だけでなく「損益計算書」もセットになっています。融資審査で金融機関は貸借対照表だけでなく損益計算書もしっかりチェックします。
後編では損益計算書及びそこから派生する「キャッシュ・フロー」のチェックポイントについて解説していきます。 |
金融機関がチェックする損益計算のポイントは?
損益計算書では、「記載された利益(損益)が実在するかどうか」という観点で融資審査の中でチェックされます。売上が本当に存在して、その数字が正しく、そこから融資の返済原資をねん出できるか厳しく判断します。
●売上計上時期
売上を実際よりも早く、当期に先行して計上していないか確認が必要です。本来翌期に計上すべき売上を先に記録すると、利益が水増しされ、原価率に不自然な変動が生じて発覚しやすくなります。
売上は「発生主義」が原則で「現金主義」ではないのでご注意ください。
さらに、「誰に」「何を」販売しているのかといった取引の実態も、審査の対象になります。
●役員報酬の金額
会社の売上規模に対して、役員報酬が過剰になっていないかをチェックされます。合理性のない高額報酬は利益圧迫の原因と見なされます。
売上1000万円で役員報酬600万円赤字決算、結果、法人税免除、審査が厳しくなります。
●減価償却が適切か
固定資産の減価償却が正しく行われているかも重要です。
減価償却不足だと費用が少なく見えるため、帳簿上は利益が出ているように映りますが、これは実際とは異なります。決まった割合毎年減価償却して費用(損金)への計上が必要です。
●雑収入の内容
臨時的な収益、特に固定資産売却益などは継続的な収入とは言えないため、本業とは切り離して評価されます(審査対象にならないことも)。
こうした収入を「営業外収益」としてまとめてしまっている場合も注意が必要です。会社の土地を売ったから利益が出て経営が順調とは見なされません(むしろ苦境だから財産の売ってお金に換えたわけです)。
●雑損失の内容
突発的な損失もまた、その発生原因によっては一時的なものと判断され、融資審査の際には除外される可能性があります。
●行き過ぎた節税策
税負担を軽減するために意図的に利益を抑える場合、見かけ上の利益が小さくなりすぎてしまい、資金調達においてマイナス評価を受けることがあります。
税金対策もやりすぎると財務健全性に疑いを持たれるため、慎重な判断が必要です。もちろん、節税が行き過ぎて「脱税」や「申告漏れ」となれば融資どころではなくなってしまいます。
このように、損益計算書は利益の金額以上に、本当にそれだけの利益が存在するのか?正しいのか?という観点で融資審査において重要な要素になります。
損益計算書からキャッシュ・フローをチェックされる
損益計算書での審査で一定の利益が出ていると判断されても、それがすぐに企業の返済能力を保証するわけではありません。
金融機関が融資審査で最も重視するのは、「現実的に返済できる体力があるのか」という点です。
ここでポイントになるのが「キャッシュ・フロー」、すなわち実際の現金の流れです。企業活動の多くは掛け取引で成り立っており、売上や仕入のタイミングと現金の受け渡しがずれることがよくあります。帳簿上では黒字でも、現金が手元にないという状況が起きるのです。(それが行きつくと「黒字倒産」になります)。
こうした事情もあり、簡易的な方法として「税引後の純利益に減価償却費を加えた金額」をキャッシュ・フローとみなして金融機関による返済力が評価されます。減価償却費は帳簿上の費用であり、現金支出が伴わないためです。
この簡易キャッシュ・フローの金額が年間返済額を下回っているようなら、資金繰りの見直しや借入金の返済計画について説明を求められることになります。
つまり、どれだけ帳簿上の利益が出ていても、実際に「返せる現金」がなければ金融機関の評価は厳しくなります。キャッシュ・フローをしっかり意識し、見た目だけの利益に頼らない資金管理が求められるのです。
キャッシュ・フロー計算書も合わせて作ると融資審査にあたり有利になる
税理士にお願いして、貸借対照表と損益計算書をもとに「キャッシュ・フロー計算書」を作ってもらいましょう。
営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フローの3つを計算し、自社の借入余力、返済資力がどのくらいあるのか、俯瞰できるようにしておきましょう。
キャッシュ・フロー計算書があると、金融機関にとってはありがたく、融資審査の加点要素になるかもしれません。
貸借対照表、損益計算書に加えて、融資で最重要な「キャッシュ・フロー計算書」もぜひ作ってチェックしてみてください。
いかがでしたか。
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